就職や転職、引越しなど、環境が変わると自分自身にも大きな影響が現れます。
特に、変わった先の環境が自分の思い描くものと大きく違っていた場合、落胆や失望の気持ちは次第に積もっていきます。
そして、自分の中に「黒い感情」が溜まっている感覚が大きくなり……。
そんな「黒い感情」に焦点を当てた小説があります。
今回は
- 現代ファンタジーが好き
- 透明感のある物語が読みたい
- 自分の中に「黒い感情」がある気がする……
という方におすすめしたい、浅葉なつ氏の小説『カカノムモノ』についてアシストします。
この記事を読めば『カカノムモノ』のあらすじとテーマがわかりますよ!
【カカノムモノとは】あらすじを紹介
『カカノムモノ』を読んでみて、テーマは「穢(けが)れとの付き合い方」だと感じました。
あらすじは次のとおりです。
坂口麻美は悪夢を見ていた。怪物に追われ、殺されかける夢だ。使えない後輩に、人を馬鹿にする同僚、図々しい肉親。不愉快なものに囲まれる日常に疲れすぎているせいだろうか? 「いいえ。それはあなたの罪です」突如現れた美貌の青年・浪崎碧はそう告げた。――時に人を追い詰めてまで心の闇を暴き解決する”カカノムモノ”とは何者か。
Amazonより抜粋
『カカノムモノ』で重要な役割をするのが、タイトルにもなっている「カカノムモノ」と「穢(けが)れ」です。
「カカノムモノ」とは、主人公である青年・浪崎碧(なみさき あお)のこと。
碧は、とある「呪い」をその身に宿しています。
「呪い」は日本の神話時代にまで遡るもので、碧の祖先が犯してしまった行いが起因しています。
碧の「呪い」を和らげる唯一の方法が「人間の『穢れ』を呑む」こと。
「穢れ」は特定の人間が心に溜めている「呪い」で、碧は「穢れ」を対象の人間から引き出すことで自身の「呪い」を抑えているのです。
「穢れ」は、人が長期間、恨みや妬みといった「黒い感情」を持っていると溜まります。
ただ「穢れ」は誰にでも溜まるものではないため、「穢れ」を溜めている人間を見つけることに碧は苦労します。
でも「穢れ」を溜めている人間が近くにいると、碧は気配を察知できるのです。
「呪い」を「穢れ」という呪いで抑える。
『カカノムモノ』は、新しい形の「浄化」の物語でもあるんです。
おすすめしたい理由は「透明感を感じる話」だから
『カカノムモノ』をおすすめしたい、もっとも大きな理由が「透明感を感じる話だから」です。
人間の中に溜まった「穢れ」を、主人公の碧が「呑む」ことで浄化する。
すると浄化された人間は、悩みやモヤモヤが取れ、清々しい気持ちになれるのです。
また、碧自身は誰もが振り返るような美貌を持った青年として書かれています。
実際、文庫版の『カカノムモノ』の表紙は、アンニュイな雰囲気をまとった碧が描かれています。
容姿端麗な主人公が「穢れ」を浄化し、浄化された人間は心が晴れる。
こう聞いただけでも、透明感を感じる話だとわかりますよね。
また本書の文章も、けっして重すぎず、さらりとしたリズムで書かれているため読みやすいんです。
書かれている内容はもちろん、文体からでさえも透明感を感じる作品となっています。
【完全な「救い」ではない】3つの注目ポイント
また『カカノムモノ』には、次の3つの注目ポイントがあります。
- 自分の中の「黒い感情」に向き合える
- 完全な「正義の味方」ではない
- 碧の葛藤も気になる
詳しく見ていきましょう。
自分の中の「黒い感情」に向き合える
注目ポイント1つ目は「自分の中の『黒い感情』に向き合える」こと。
『カカノムモノ』に登場する「穢れ」を抱えた人物達は、それぞれ「黒い感情」を抱えています。
「黒い感情」は、主に他者へ向けられたものです。
ただ、この「黒い感情」は、現代を生きる私達も抱えてしまうものです。
仕事ができる同僚への嫉妬、自分が持っていないものを持つ知り合いへの葛藤など、「穢れ」の元となる「黒い感情」の芽は私達の中に必ずあります。
ただ、その芽をそのまま育ててしまうのか、それとも違う感情で打ち消すかで、その人の運命は大きく変わります。
『カカノムモノ』で「穢れ」を溜めてしまった人物は、いずれも「黒い感情」の芽を大きすぎるほどに育ててしまったのです。
本書を読むと、自然と自分の中の「黒い感情」に意識が向きます。
あなたの心にも「黒い感情」が溜まっていたら、他人や自分を傷つけてしまう前に、解消法を見つけましょう。
完全な「正義の味方」ではない
注目ポイント2つ目は「完全な『正義の味方』ではない」こと。
『カカノムモノ』の主人公である碧。
ここまでの記事を読むと「人の穢れを浄化してくれるヒーロー」のように思えますよね。
でも作中で碧は、自身のことを「僕がやっているのは、人助けではありません」と話しています。
「穢れ」を呑まないと、自身にかかった「呪い」が進んでしまうため、仕方なしに「穢れ」を呑んでいるためです。
人間が溜めた「穢れ」は、放っておくとその人自身を支配し、暴力や傷害といった、他人を傷つける行動を起こします。
実際、碧も「穢れ」を放置したことで、とある人物を亡くします。
自分が行っている行動が人助けではないとしても、傍から見ると人助けと思われる。
これは現代の私達にも言えることで、自分はそんなつもりはなかったのに「良い行い」だと見られ、いつの間にか「いい人」「善人」という役割を演じてしまいます。
そんな本人にとって辛い現実が『カカノムモノ』には反映されているのです。
碧の葛藤も気になる
注目ポイント3つ目は「碧の葛藤も気になる」こと。
先ほども書いたように、碧は完全な正義の味方ではありません。
その証拠に「穢れ」を取られた人間には「とある変化」が訪れるため、一概に良かったとは言えない結末になるのです。
そして作中では、碧自身も「穢れを呑む」という行為に苦悩します。
苦悩に至る理由には、ある女性が関わっているのですが、詳しくは『カカノムモノ』を読んでみてください。
それでも碧の行いによって助かった人がいることも事実で、第1話に登場する麻美は「穢れ」が無くなったことで前向きになれるんです。
自分の行いが、その人の運命を大きく変えてしまうことがある。
碧がその事実に気づいた時、彼の中の葛藤もまた大きくなります。
『カカノムモノ』には続編があり、全3巻で完結となっています。
碧が葛藤の中で、どう「穢れを呑む」ことと向き合うのか?
興味が湧いた方は1巻目の『カカノムモノ』だけでなく、ぜひシリーズ通して読んでみてください。
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四国生れ。関西在住。2010(平成22)年第17回電撃小説大賞でメディアワークス文庫賞を受賞し、『空をサカナが泳ぐ頃』でデビュー。『神様の御用人』が人気を博し、同書はシリーズ累計100万部を突破した。他著書に、『山がわたしを呼んでいる!』『サクラの音がきこえる あるピアニストが遺した、パルティータ第二番ニ短調シャコンヌ』などがある。(新潮社HPより抜粋)
まとめ:「穢れ」との向き合い方は
ここまでご覧いただき、ありがとうございます。
今回は浅葉なつ氏の小説『カカノムモノ』を紹介しました。
自分の中の「黒い感情」である「穢れ」と、どう向き合うのか?
現実に碧は存在しないため、自分で深く考え、行動に移す必要があります。
「穢れ」が原因で自分や他人を傷つけてしまう前に、解消するよう行動しましょう。
それでは、良き読書ライフをお送りください!
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