医療とミステリー。
一見、結びつかない事柄ですが、小説の世界には「医療ミステリー」というジャンルがあります。
病院や医療の現場を舞台として、そこにミステリー要素が加わった話のことです。
今回は、そんな医療ミステリー作品である、内藤了(ないとう りょう)氏の作品『ゴールデン・ブラッド GOLDEN BLOOD』についてアシストします。
- 医療ミステリーものが読みたい!
- 「ゴールデン・ブラッド」とは何か気になる
- 医学の未来を垣間見たい
という方におすすめしたい作品です。
実は、私が初めて読んだ医療ミステリー作品でもあります。
今回の記事を読めば『ゴールデン・ブラッド』のあらすじとテーマがわかりますよ!
【ゴールデン・ブラッドとは】あらすじを紹介
作品のタイトルにもなっている「ゴールデン・ブラッド」とは、新開発された「人工血液」の名前です。
内藤了氏の作品『ゴールデン・ブラッド GOLDEN BLOOD』は、この「人工血液」を巡る医療ミステリーとなっています。
あらすじは次のとおり。
東京五輪のプレマラソンが行われた会場で自爆テロが発生。
現場では新開発された人工血液「ゴールデン・ブラッド」が輸血に使われ、主人公で消防士の向井圭吾も「ゴールデン・ブラッド」で多くの人々の命を救いました。
しかし、圭吾の妹が「ゴールデン・ブラッド」が開発された病院で急死します。
さらに「ゴールデン・ブラッド」を輸血された人々も次々と変死していき――。
圭吾は妹の死の真相を探るうち「ゴールデン・ブラッド」の秘密も解き明かしていく、という内容になっています。
おすすめしたい理由は「医学の闇に触れている」こと
『ゴールデン・ブラッド』をおすすめしたい、もっとも大きな理由は「医学の闇に触れている」点。
一見、理想の医薬品と思える「ゴールデン・ブラッド」。
実際、自爆テロが起こった現場で使われ、多くの命を救いました。
しかし「ゴールデン・ブラッド」には致命的な欠陥があったんです。
それは作中で触れられていますが、主人公の圭吾は「ゴールデン・ブラッド」と妹の死が関連していることに辿り着きます。
そして「医学の闇」にも触れるのです。
自分がそれまで信じて従事していた医療の分野。
その分野の闇を知ることは、圭吾にとって相当の負荷を伴うことだったはず。
それでも圭吾は妹の死の真相を知りたいという決意から、「ゴールデン・ブラッド」の闇を解き明かしていきます。
【主人公の決断】3つの注目ポイント
また『ゴールデン・ブラッド』には、次の3つの注目ポイントがあります。
- 医学の進歩が正しい方向に向かってほしいと思う
- 真相に迫るにつれ、やるせなくなる
- 主人公の決断を応援したくなる
詳しく見ていきましょう。
医学の進歩が正しい方向に向かってほしいと思う
注目ポイント1つ目は「医学の進歩が正しい方向に向かってほしいと思う」こと。
一見、多くの人を助けるために開発されたゴールデン・ブラッドですが、実際は医学の闇が隠されていました。
また、副作用が分からない新開発の医薬品を安易に使わないのが通常ですが、様々な思惑が重なり、人工血液「ゴールデン・ブラッド」を使うに至ったのです。
医学は日々進歩していますが、『ゴールデン・ブラッド』を読むと、その進歩の方向が正しい方向に向かってほしいと願いたくなるのです。
真相に迫るにつれ、やるせなくなる
注目ポイント2つ目は「真相に迫るにつれ、やるせなくなる」こと。
妹が急死するという悲劇に見舞われた、兄であり主人公の圭吾。
ただ、妹の死の真相とゴールデン・ブラッドの秘密に迫るにつれ、妹の想いを知ることになります。
それはただの「兄妹」という枠を超える、大きな愛でした。
物語の真相が明らかになるにつれ、圭吾が置かれている状況にやるせなさが大きくなります。
自身が医療関係者だからこそ、ゴールデン・ブラッドに対して憎しみに近い感情を持ちつつも、妹の死の真相が明らかになると、ゴールデン・ブラッドを心の底から憎めなくなるのです。
きっと読み進める読者も、圭吾と同じような葛藤を抱えるはずです。
主人公の決断を応援したくなる
注目ポイント3つ目は「主人公の決断を応援したくなる」こと。
物語の最後、圭吾は大きな決断をします。
その決断は、医学の進歩から言えば喜ばしいことかもしれません。
けれど、その決断に至るまでの圭吾の葛藤は耐えがたいものでした。
圭吾の決断の後押しとなったのが、亡くなった妹が残した手紙です。
手紙に書かれた妹の想いを知った圭吾は決断し、前に進む場面で話は終わります。
圭吾の決断は正直、賛否が分かれると思います。
それでも私は、圭吾の決断を応援したいし、この決断が医学を正しい方向へ向かうきっかけになるとも思えました。
圭吾が最後にどんな決断をしたのか?
ぜひあなたの目で確かめてみてください。
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長野市出身、在住。長野県立長野西高等学校卒。デザイン事務所経営。2014年、日本ホラー小説大賞読者賞を受賞した『ON 猟奇犯罪捜査班・藤堂比奈子』でデビュー。同作から始まる「藤堂比奈子」シリーズは広く支持を集め、一六年、連続テレビドラマ化。その他「よろず建物因縁帳」シリーズなど。(Amazonより抜粋)
まとめ:医学の進歩は続く
ここまでお読みいただき、ありがとうございます。
今回は内藤了氏の作品『ゴールデン・ブラッド GOLDEN BLOOD』について紹介しました。
医学は日々、進歩しています。
実際、ゴールデン・ブラッドに似た血液製剤の開発も進んでいます。
私達は見守ることしかできませんが、その向かう先が明るい未来であると信じたいです。
それでは、良き読書ライフをお送りください!
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