
「超能力」と聞くと、どうしても「胡散臭いもの」「トリックがあるもの」という考えが先に来ます。
でも近い将来、超能力が国家的な能力と認められ、資格も与えられるとしたら……?
少しワクワクしますよね。
今回は誉田哲也(ほんだ てつや)氏の小説『増山超能力師事務所』についてアシストします。
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- 体系化された超能力に興味がある人
- ハードボイルド系の小説が読みたい人
- 人間の悩みや葛藤を味わいたい人
このような方におすすめの作品です。
本記事を読むと『増山超能力師事務所』のあらすじとテーマがわかりますよ!
【超能力師たちの物語】あらすじを紹介

『増山超能力師事務所』を読んでみて、テーマは「異端ゆえの苦悩と葛藤」だと感じました。
本作のあらすじは次のとおりです。
日暮里駅から徒歩10分。ちょっとレトロな雑居ビルの2階にある増山超能力師事務所――。所長の増山率いる、見た目も能力も凸凹な所員たちは、浮気調査や人探しなど、依頼人の悩み解決に今日も奔走。超能力が使えても、そこは人の子。異端の苦悩や葛藤を時にユーモラスに時にビターに描く人気シリーズ第1弾。
『増山超能力師事務所』カバーより抜粋
本作は超能力が世間的に認められた世界がベースです。
宇宙に膨大にある「ダークマター」が超能力に関係しているとわかり、測定方法などが発達した近未来的な世界となっています。
また日本初の超能力者団体「日本超能力師協会」が発足し、そこに認められた超能力者は「二級超能力師」「一級超能力師」として認定されます。
認定された超能力者は世間的にも正式な「超能力師」として認められ、超能力を使用した仕事を請け負えるのです。
ただ、超能力師として認められるには、様々な試験に合格しなければなりません。
試験はどれも難しく、苦手分野がある超能力者は「二級超能力師」の資格を受けるのでさえ、何年もかかり、その間はたとえ超能力があっても「無能力者」と呼ばれてしまいます。
『増山超能力師事務所』に収録されている全7話は、すべて主人公が異なります。
事務所の所員だったり、事務所に関係がある人物だったりと、それぞれの視点で物語が進んでいくのです。
どの話も、超能力があるからこその苦悩や葛藤が描かれています。
中には超能力を持たない人物の話もあり、力を持たない人物から見た超能力者の苦悩ぶりも見どころなんです。
おすすめしたい理由は「超能力の設定が具体的」だから

『増山超能力師事務所』をおすすめしたい、もっとも大きな理由が「超能力の設定が具体的」だからです。
先ほども少し触れたように、本作は世間的に力が認められた超能力師の物語です。
そして超能力の部類も具体的に定められています。
例えば、対象者が触れた物体から残留思念を読む「サイコメトリー」も
- 金属媒介感受
- 液体媒介感受
- 有機物媒介感受
- 複合媒介感受
と分かれ、プラスチックや素材が交じった物体から残留思念を読むのは難しいと定義されているのです。
また協会から使用が禁止されている能力もあります。
その1つが「パイロキネシス(発火能力)」。
実際パイロキネシスを得意とする所員の悦子は、過去使用していた能力を、現在はけっして使わないようにしているのです。
超能力という具体性に欠ける力を具体化・細分化し、実際の力として描かれていることが『増山超能力師事務所』の魅力なのです。
【超能力師も人の子】3つの注目ポイント

また『増山超能力師事務所』には、次の3つの注目ポイントがあります。
- 超能力師も人だと思える
- ハードボイルド系の入門にピッタリ
- 増山の底知れない力に惚れる
詳細を見ていきましょう。
超能力師も人だと思える
注目ポイント1つ目は「超能力師も人だと思える」こと。
超人的な力が使える超能力師も、本作では1人の人間としてリアルに描かれています。
特に印象的なのが「侮れないのは女の勘」での主人公・悦子の話です。
悦子は高校生当時、相手の思念を読む力と発火能力を振るい「川口の魔女」と恐れられる存在でした。
ですが、後に所長となる増山に出会い、過去の悲しい出来事が自分のせいではないとわかります。
それまで頑なに自分のせいだと思っていた出来事によって自分の心を凍らせていた悦子は、増山に出会ったことで過去から解放されたのです。
悦子が過去から解放されたのは、増山の力のおかげでもあります。
でも、異端な力を持つ超能力者も1人の人間であること、人間的な感情を持っていることが描かれており、読者は登場人物に感情移入できるんです。
ハードボイルド系の入門にピッタリ
注目ポイント2つ目は「ハードボイルド系の入門にピッタリ」なこと。
超能力がテーマであるものの、本作はどちらかというとハードボイルド系の作品でもあります。
普通、超能力というとSF系に近い作品を想像しますが、本作はそうではありません。
事務所が雑居ビルの一角にあったり、浮気調査や人探しが主な依頼だったりと、探偵ものに近い作風なのです。
ただ、ハードボイルド系でも時々ユーモアが交えられているため「ハードボイルド系をあまり読まない」という方でも読みやすい作品となっています。
私もハードボイルド系はほとんど読んでいませんでしたが、本作は読みやすく、最後まで物語を楽しめました。
「ガチガチのハードボイルド系が読みたい」という方には少し物足りないかもしれませんが、「ハードボイルド系を初めて読む」という方は、本作を入り口にしてみましょう。
増山の底知れない力に惚れる
注目ポイント3つ目は「増山の底知れない力に惚れる」こと。
『増山超能力師事務所』の所長を務める「増山圭太郎」。
第1話「初仕事はゴムの味」では、二級超能力師になったばかりの篤志の仕事を軽く手伝うため「増山の力はこんなものなのか」と感じてしまいます。
ところが話を追うごとに増山の力量が分かり、最終話「相棒は謎の男」では、増山の底知れない力に読者は驚きます。
そして読み終わると、所員の悦子や明美のように増山の力や人柄に惚れるんです。
本作はシリーズ第1弾となっているため、最後まで読み終わっても謎が残されていたり増山の力量が解明されていなかったりしています。
私もまだ2作目は読んでいませんが、第1弾の本作を読んだだけでも増山の魅力にやられました。
興味がある方は1作目である『増山超能力師事務所』を読んでみて、次作を読むか決めてみるのもおすすめです。
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1969年、東京都生まれ。学習院大学卒。2002年『妖の華』で第2階ムー伝奇ノベル大賞優秀賞を受賞してデビュー。著書に『ストロベリーナイト』『世界でいちばん長い写真』『歌舞伎町セブン』など。(『増山超能力師事務所』カバーより要約)
まとめ:超能力が世間に受け入れられたら
ここまでご覧いただき、ありがとうございます。
今回は誉田哲也氏の小説『増山超能力師事務所』を紹介しました。
最後に印象に残った一文を紹介します。
「人間なんて、陰湿で陰険で、残酷な生き物だ。」
とある人物の言葉ですが、誰がどうしてこう思ったのかは、本作を読んで確かめてみましょう。
超能力が世間に認められたら、きっと世の中は大きく変わります。
ただ超能力師も人であることも、忘れないでおきましょう。
それでは、良き読書ライフをお送りください!
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